20日、午前に起きた中華航空機炎上事件は、色々と考えさせられるものがある。


 まずは事件のおさらいをしておこう。


 20日午前、那覇空港で起きた中華航空機の炎上。乗客乗員165人は間一髪、機外に脱出した。機内は大きなパニックには陥らず、乗客は比較的落ち着いて避難したが、脱出後、疲労を隠せない様子で炎上時の恐怖を振り返った。【三森輝久、中村篤志】 毎日新聞より


 ◇社長が謝罪--中華航空


 中華航空の趙国帥社長らは20日午後9時、那覇空港内で会見し「乗客や関係当局に多大なご迷惑をかけ、おわび申し上げる」と改めて謝罪した。


 趙社長は「着陸して機体を停止するまで、機体に異常はみられなかったし、計器類も異常を示さなかった」と強調。事故原因については「事故調査委員会の調査結果を待ちたい」と繰り返した。


 同社によると、事故機は就航から5年で、飛行時間は通算約1万3660時間。7、8月の検査では異常はなかったという。炎上したエンジンはゼネラル・エレクトリック(GE)社製で、GE社が定める耐用年数期間内だった。同社は同型機を他に11機保有しているが、特別検査を行って安全性を確認するという。


 報道陣から「他社と比べ事故率が高いのでは」と指摘されると、会見に同席した同社の陳鵬宇広報室副室長は「過去にいくつか事故がおきたが改善に努め、現在は会社として国際的な評価機関から(安全との)認証を受けている。事故は誠に遺憾で再発防止に全力をあげる」と述べた。


 さて、間一髪も一人の犠牲者も出さなかった事故であるが、世間に与えた影響は計り知れないものがある。


 火が燃料について爆発するまでのわずかな時間に航空機に乗っていた百人以上の乗客全員が脱出するまでには普通の方法では5分以上はかかるだろう。そこで、米連邦航空局が制定した90秒ルールというのがある。


 それが今回、全員無事脱出できた最大の功労者なのはいうまもでないし、この機会にほかの航空会社も積極的に取り入れようとするだろう。


 私もこの事件をみて、初めて90秒ルールというのを知ったのではあるが、これは義務づけられているものではないらしい。新聞の記事によれば、機内の全非常用脱出口の半数以内を使って90秒以内に、脱出できるような機体の設計を航空機メーカーに求めているもの。だそうだ。


 求められているということであり、義務ではないのだから、もし、この飛行機に90秒ルールがなく、燃料漏れが発生、乗客が脱出中に爆発して、大惨事に繋がっていたと思うと心苦しくなる。


 飛行機というのは巨大な空飛ぶ鉄のかたまりである。確かにハイテクという機械を装備しているかもしれないが、事故は必ず起きる。それが機械の故障であったり、天候や鳥が原因であったり、パイロットの操縦ミスや判断ミス、メンテナンスの人為的ミス、はたまたパイロット訓練指導不足であったり、メーカーの安全基準を満たしていない飛行機の運用など、理由は様々であり、その原因がいくつか複合して事故を招く。毎年、多くの人々が飛行機の事故で命を失っている。


 飛行機の安全基準はそうした人々の蓄積である。ある事故が起きれば、その事故を起こさないように安全基準が高められる。中には、それまでの体験や経験で生み出された基準があるかもしれない。しかし、命を奪ってから再発防止に気をつけますなら・・・誰でもいえることである。


 少し前に、胴体着陸をした飛行機を覚えているだろうか。あの飛行機のパイロットは危機管理マニュアルと危機管理シミュレーションに従ったという。


 いったい何が生死の基準になるかはわからない。しかし、あらゆる危機を想定した訓練や危機管理マニュアルの徹底、パイロットの判断やより良い体調管理などが、事故防止に役立つのだ。


 乗客は飛行機のパイロットに命を預ける。


 パイロットは自分が操縦する飛行機で乗客(命)を運ぶ。


 命を運ぶことの責任。それはパイロットを含めた航空関係者すべてに言えることである。


 航空業界が慈善事業でないのは当たり前だが、ことさら安全にかけての徹底した配慮を切に望む。事故が起きてからの対応では、死んだ人は帰ってこないのだから。