前回の続き。雑談にするつもりが、いつのまにか問題にまで話が発展しましたので、ここでもう一度おさらいしておきます。


 景観条例とは、全国の地方自治体で、街の景観を守るため、建築物の高さなどに規制を設ける条例です。


 私が住んでいる京都市でも勿論、じつは他の市でもこの取り組みが行われております。


 私のいつもの論理では、反対意見だけを持ってきても、公平ではありませんので、景観条例に賛成する意見も取り上げていきます。まずは簡単な経緯を説明。


 国土交通省は2003年、景観を保全していくための基本的な考え方をまとめた「美しい国づくり政策大綱」を策定した。そこに景観に関する基本法制定の方針が盛り込まれ、05年6月、地方自治体の景観保全を支援する景観法が全面施行された。高層マンション建設をめぐり、業者と周辺住民とのトラブルが相次いでいたことが背景にある。外国人観光客を誘致し「観光立国」を目指すことも狙いの一つだ。これを受けて、景観への規制を設ける地方自治体が増えた。(読売オンラインから 抜粋)


 具体的な法律もここにわかりやすい説明が載っているので抜粋。


 都道府県と政令指定都市、中核市を景観行政団体と定め、景観に関し強制力のある規制ができるようにしました。他の市町村も都道府県の同意があれば景観行政団体になれます。規制の内容は各景観行政団体に任されています。景観計画を作って条例改正などを行えば、建築物の高さやデザイン、色彩などを規制できます。基準から外れた建築物には設計の変更命令を出せ、応じない場合に最大50万円の罰金を科せます。


 では、景観をよくするとどうなるのか?


 「住宅地では、美しい街並みになれば住民の満足度が高まるでしょう。商業地や観光地なら、訪れる人が増えて土産物などの販売額が増える経済効果が期待できます。埼玉県川越市のように、地元の人たちが協定を結んで蔵造りの街並みを保全した結果、注目を集めて観光客が増加した例もあります」


 と、専門家はいっております。


 では、反対意見もここから抜粋。


 「京都市に、屋外広告の業界団体と一緒に規制見直しの要望書を出しました。地元の広告業者には死活問題になりかねません。ネオンは街のにぎわいや彩りには必要なものです」


 「ビルやマンションを建設する場合、高層にできれば土地を有効利用できます。テナント数や販売戸数を増やせるからです。規制で高さが低くなれば、本来は得られたはずの収益が失われます。不動産の価値が下がれば、地主が不利益を受ける可能性があります。過度な規制は、経済活動を妨げる懸念もあります」


 まあ、ここまでの内容ならただネットから拾ってきたものなのだが、ここで少し視点を変えてみようと思う。なぜ、私が過度の景観規制に賛成しないのか。それは京都市の財政も関係がある。


 京都市の昨年の財政をここに記すと


 歳出


 社会福祉      2122億円

 道路整備等     1163億円

 市債の返済     812億円

 教育         613億円

 その他        2010億円


 総額  6720億円


 性質別歳出


 給与費       1312億円

 扶助費       1343億円

 公債費       803億円

 投資的経費    835億円

 物件費等      2427億円


 歳入


 市税        2421億円

 地方交付税    958億円

国庫支出金    983億円

 府支出金     137億円

 市債        736億円

 その他       1576億円


 総額        6811億円


 国が何百兆円も借金している現実があり、京都市にも借金するなとは言えないが、この財政が危機的な状況にあるのは見ての通りである。京都市の人口に劇的な変化がないかぎり、私たちが払う市民税を考えてもたいして増収にはならない。すでに予算で結果は出ている通りであろう。


 なら、京都市が財政削減をするために、当然、支出を減らすことが必要になる。そのために、市長が5年ほど前に、緊急事態宣言を出したことを覚えている方もいるはず。580億円の多額の借金を背負っていた。あれから様々な制度や削減によって少しは改善されたようにも思える。しかし、いつ夕張市のように財政破綻をするか、油断ならない状況である。


 その中で、できる限りの削減も加えて、当然、歳入(収入)も増やす必要がある。だが、この景観条例は、歳入を増やすという観点からすれば、-効果になるのは火を見て明らかである。


 観規制をまったくするなとはいわないが、過度な規制によって、看板業者、不動産からの収入を激減させてしまえば、本末転倒であろう。持続可能な開発こそが望まれるのであって、観光収入という不確かな収入見込みを当てにして、規制を強化していけば京都の発展はありえない。


 多くの有名企業が京都から出てからはでは遅いのだ。収入がなくなって、じゃ規制緩和しますでは、誰も京都に見向きもしない。景観が良ければ、京都はなんとかなるというのは幻想だと、私は思う。


 おしまいにこんな事例も紹介しておこう。


 京都市は建物の高さ規制によって、現在、建設されているビルやペナントは、規制より、上の階にはプレミア価格がついている。同じビルやペナントなのに、借りる値段は数倍近く違うのだ。


 これがどういう理由なのか説明するまでもない。


 長くなったが、私が反対する理由を述べた。これをどうとらえるかは読者に任せようと思う。